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東太平洋海膨の熱水噴出

−MODE'94SEPRの潜航調査結果−

 

深海研究部 藤岡換太郎
Kantaro FUJIOKA
深海研究部 海宝市佳
Yuka KAIHO

 

1. はじめに
海洋科学技術センターでは、1994年6月から11月にかけて大西洋中央海嶺と東太平洋海膨で「しんかい6500」による国際共同潜航調査を実施しました。図−1には調査を行った地域が示されています。この一連の研究航海は、MODE’94(Mid Oceanic ridge Diving Expedition)計画と名付けられました(SEPR:南半球の東太平洋海膨)。大西洋中央海嶺ではウッズホール海洋研究所(WHOI)との研究協力協定により、また東太平洋膨張では科学技術振興調整費「海嶺におけるエネルギー・物質フラックスの解明に関する国際共同研究」により、海洋地殻(海洋プレート)形成の場である中央海嶺系における地質・地球物理・地球化学的な総合研先を行うものでした。またこの計画は世界の研究者の参加するインターリッジ計画(InterRidge)の一環でもありました。8月下旬までに、大西洋での2行動が順調に終了し(小林、1995;藤岡、1996)、9月14月から東太平洋海膨において2回のレグにわたって調査が行われ11月29日に全行動が順調に終了しました。「よこすか」はタヒチのパペーテ港を12月1日に出港し、12月16日に横須賀に帰港しました。ここでは、東太平洋海膨における2行動の成果について報告します。
2. 調査の目的
(1)海嶺研究の重要性
海洋には地球に降り注ぐ太陽エネルギーと地球内部からのエネルギーの両方が作用しています。地表の単位面積で比較すると、太陽エネルギーが後者をはるかにしのいでいますが、中央海嶺では地球の内因的エネルギーおよび物質が最大かつ最も効率的に地表にもたらされています。活動的な熱水噴出孔から放出される熱量は、長さ1kmの海嶺から生産される100万年分の太洋底の熱流量に匹敵するという試算もあります。海嶺では地球全体の8割の火山沽動が起こっていると推定されており、マグマの噴出により海底の張力割れ目が埋められ、新しく地球の表面が海生している場所ですが、これまで一度も噴火が目撃されたり映像に収められたりしたことはありません。
海嶺には大規模な海底熱水活動が起こっています。熱水活動が海水の化学組成を大きく変えているとの考えもあります。特に、海水中のリチウム、珪素、マンガン、鉄などはこの海底熱水鉱床が海水への最大ないし主な供給源になっています。海水は地表水の97%を占めており、その化学組成が変わることは生物活動その他を通じて地球全体のシステムに影響出ることを意味しています。
太腸エネルギーによらない生物系、つまり熱水中の硫化水素を利用する化学合成エネキルギー固定により大型生物の群集が支えられています。世界最古のバクテリア化石の産状から判断すると、このような環境は始生代の地球上で生命が誕生した所と極めてよく似ています。また海洋微生物が寄与する海洋全体の物質収支を考えるうえで、決定的に重要な役割を果たしているにもかかわらず、定量的には全くそのシステムの働きが解明されていないのが現状です。
東太平洋は太平洋プレートの生成域で特徴づけられ、海嶺軸に数多くの海底熱水活動が存在しています。一方

 

 

 

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